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<殺人容疑>女子高校生、恋人の男子高校生刺す 犯行後に事故死 ××新聞 12月26日(水)13時37分配信 容疑者は25日午後9時頃、被害者のマンションで男子高校生の右脇腹を包丁で刺し死亡させた疑い。 その後逃走を図ったと見られる容疑者は同マンションの踊り場にて足を滑らせ頭部を負傷。そのまま死亡したと警察は発表した。 同級生たちの証言から、二人はなんらかのトラブルを抱えていたと見られ、警察は慎重に捜査を進めている。 最終更新 12月26日(水)13時37分 ――11月20日、桂言葉の場合 もうあの事件から、誠君がいなくなってから1年が過ぎようとしている。 誠君を誘惑した、憎い憎いあの人はもういない。私が手を下す前に、あの人は勝手に死んでしまった。 その後はいろいろなことがあった。 警察からの追求、マスコミの執拗な取材。 誠君がいなくなってしまったことで塞ぎ込んでいた私を心配して、両親は引越しを進めてくれた。 もうこの街には居づらくなっていたし、私の嫌いな人がたくさんいる学校には行きたくなかった。 ―――だけど、誠君との思い出が残るこの街を出ていくのは、少しだけ悲しかった。 引越し先の街の名は冬木市と言う。 周囲を山と海に囲まれた自然豊かな地方都市で、「冬木」という地名は冬が長いことから来ているとされる。 だけど実際には温暖な気候でそう厳しい寒さに襲われることは無いらしい。 今日もまた、学校が終わったらお医者さんの所にいかなきゃ。 この街に来てから、お父さんの勧めで半年以上通ってるけど毎回お医者さんとお話しをして、お薬をもらうだけ。 ……私はもう平気なのに。だけどちゃんとお医者さんのところに行かないと、またお父さんやお母さんに心配をかけてしまう。 『……ふうん、そんなことがあったの。それは災難だったわね。まあ、私としては薄幸な阿良々木くんのほうが魅力的に見えるけど。 ねえ、なんならもっと災難な目にあって私にもっと阿良々木くんの魅力を感じさせてくれないかしら?』 『それはつまり、薄幸ではない僕にはあまり魅力を感じないということか?!』 『そうは言ってないわ、でもこういう言葉があるじゃない。「他人の不幸は蜜の味」って』 『自分の彼氏を他人って言ったよこの人!』 途中、同じ学校の人とすれ違う。 恋人との話に夢中だからなのか、下を向いて歩いていた私には気づきもしない―――。 「…………。」 少しだけ、嫉妬する。 別にあの男の人のことが気になるとか、そういう理由じゃない。私は今でも誠君だけを愛しているのだから。 でも、なぜあの二人だけが幸せで、私は大好きな人と引き裂かれなくてはならなかったのだろう。 私だけが一人ぼっちで、他の人たちは幸せそうに笑っている。 ――私も、あの人達みたいに笑ってみたい。誠君とまた楽しくお喋りして、一緒に過ごしたい。 だけどどんなに抗っても、私のそんなささやかな願いすら神様は聞き入れてくれない。 だってもう誠君は、この世界にはいないんだから―――。 「―――生きてて、意味あるのかな……?」 誠君のいない灰色の世界。そんなものに、どれほどの価値があるというのだろう。 ―――19 20 今日の私は珍しく饒舌だった。 先生と話こんでしまい、帰宅した時には日も落ちていた。 なんだかんだで、私はあの先生とのお話を楽しみにしているのかもしれない。 確かにあの先生はとてもお話が上手だし、私の話もきちんと聞いてくれる。 聞き上手というやつなのかもしれない。私が普段話せない悩みや、思ったことなんかも先生には自然と話してしまう。 玄関、リビングの明かりはついていない。まだ両親は帰っていないのだろうか? 『今日帰り、遅くなります。夕ごはんは冷蔵庫に閉まってあるので、食べてください。ママ』 テーブルに置かれた書き置きを一瞥すると階段を登り、私は二階の部屋へと移動する。 お父さんはまたいつも通り帰りは遅くなるのだろう。心は……妹はどうしたんだっけ? 確か今日は友達のところにお泊りするって、今朝言ってたかな……。 着替えて、ご飯を食べなきゃいけないのにそれがひどく億劫に感じる。 制服から着替えることもなく、私はベッドに身を投げ出すと携帯電話を確認する。 メールやブックマークしたページをチェックするわけじゃない。 携帯電話のおまじない… 『好きな人の写真を待ち受けにして3週間、誰にもバレなかったら恋が成就する』 待ち受け画面には、あの頃のままの誠君がいる。 ――誠君はあの頃のままなのに、私はこれからも歳を重ねていく。 学校を卒業して、いつか大人になり、就職して、そして……。 ――あの頃のままの誠君だけを置いて、自分だけが成長していく。 ――そんなのはイヤ。誠君だけを置いていくなんて、可哀想。 その時携帯電話が震え、メールの着信を知らせる画面が表示される。 いったい誰だろう……そもそも私にメールを送ってくる人なんて……。 気味が悪いと思ったけど、私は携帯電話を操作し送られてきたメールを読む。 【Time】20XX/11/20 19 23 【From】Apocrypha運営チーム 【Sub】当選のお知らせ おめでとうございます。あなたは当方の運営する全く新しいオンラインゲーム、 『Apocrypha(アポクリファ)』のテスターに選ばれました。 『Apocrypha』は英霊たちを自らの僕として従え、あらゆる願いをかなえられる 『聖杯』を巡り、戦うという設定になっております。 下記に添付させていただいたURLコードから当方のサイトにごアクセスいただき、 当アプリケーション『英霊召喚プログラム』をインストールしていただくことで 『Apocrypha』をいつでもどこでもお楽しみいただけます。 それでは、あなた様のごアクセスを心よりお待ち申しております Apocrypha運営チーム まったく身に覚えのない内容のメールだった。 私はあまりゲームには詳しくないし、たいして好きでもない。 だけどこの一文が私の興味を引いてならない “あらゆる願いをかなえられる” そんなこと、あるはずがない。あくまでこれはゲームの設定の話で、現実に願いが叶うわけじゃない。 だけどもし、もし願いが叶うなら……。 『英霊召喚プログラム』にカーソルを合わせ、私の手はなんの迷いもなく決定ボタンを押す。 ゆっくりと赤いバーが横に伸びていき、それが満ちたとき画面に表示される、『プログラムを起動しますか?』という文字と、その回答を求める『はい』と『いいえ』の文字。 また同じように、『はい』の文字を押した時、バチバチっ!というなにかが弾けるような音と強力な閃光が私の部屋を真っ白に照らす。 私の家に雷が落ちたのだろうか。携帯電話、壊れないといいな。 恐れることも、驚くこともない。これはきっと私に害をなすことじゃない。 閃光が収まり、私が目を開けたとき、そこにいたのは長刀を持った、白いマントの剣士。 骸骨のような、禍々しい異形の仮面をつけたそれは人であり、人を超えた英霊。 あぁ、そうか。本当だったんだ、あれ。 英雄たちを僕として従え、あらゆる願いをかなえられる『聖杯』を巡り、戦う――。 ならこの子は私の味方。私の願いを叶えてくれる天使様。 「待っててね、誠君。もうすぐ、また会えますから――。」 この日以降、冬木市に置いて変死、怪死、行方不明事件が続発することとなる。 愛に狂った少女は、同じく狂気に染まりし英霊を率い夜を往く。 愛しい人と再会するため、聖杯獲得のため―――。
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聖杯(Holy Chailce) 「最後の晩餐」において、キリストが弟子達に「私の血である」としてワインを注ぎ、振舞ったという杯。 弟子達の手によって各地に運ばれ、その土地で様々な伝承を成した。よって一つだけではない。 またこの聖杯がヨーロッパにおいて騎士道物語に取り入れられ、聖杯探求の旅が描かれる「聖杯伝説」物語郡が生まれた。 「アーサー王伝説」で騎士達が探索に出された聖杯もこれである。 手に入れた者のあらゆる願いを叶えるという願望機であり、最高位の聖遺物。 しかし、真実の聖杯を手にした者はおらず、伝説の域を出ないとされている。 冬木の聖杯(Holy Grail) 数十年に一度冬木の土地に現れる、あらゆる願いを叶えるという器。 これだけなら出来の悪い与太話で終わってしまいそうなものだが、その奇跡の一端を「サーヴァントの召喚」という形で示す事で「真贋はともかく規格外の魔術礼装」として認知されている。 器は願いを叶える「願望機」としての役割も確かに持っており、儀式の完成によってもたらされる膨大な魔力を用いれば大抵の願いは叶えることが可能なので、実質的には真作の聖杯を手にしたのと変わらない。
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セルティ・ストゥルルソン(岡部倫太郎)
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英雄達の伝説の具現。 多くの英霊が一つ以上自らの宝具を持ち、これが彼らの切り札・必殺技となる。 宝具は英雄が生前使っていた剣や槍や弓などの武器や、指輪や盾といった補助的な武装が基本だが、 中には生前の英雄が用いた魔術・奥義・技などが宝具扱いされている物、生前の伝説や絆が英霊の能力として宝具化したものなどもあり、非常に多種多様の宝具が存在する。 能力も当然宝具によって大きく異なるが、殆どの宝具は全力を開放するには魔力を注ぎ真名の詠唱による覚醒が必要なこと、 その威力・効果範囲などによって、対人・対軍・対城の三つに大きく分けられることは共通している。 ただし、中には真名開放を必要としない常時発動タイプの宝具や、結界宝具・対魔術宝具・対界宝具のように上記の三つの分類に当てはまらない宝具などの例外はある。
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447 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/25(水) 20 15 14 ID MdoRwHMI 上条「うう……相変わらず不幸だ。 結局インデックスも一方通行も助けられなかったし……ん?」 ――ウオオオオオエクスカリバーーー!! ――ナンデオレバッカコンナメニアウネン!!! ア、アッーーー!!! 上条「な、何だあの騒ぎは!?」 セイバー「シロウ……私は、私はああああああ!!!」 アーチャー「落ち着けセイバー、まだ助からないと決まった訳では……!!」 セイバー「黙れええええ!!!「約束された勝利の剣」!!!」 アーチャー「くっ、躱せないか!!」 パリーン セイバー「っ!! 打ち消された!?」 アーチャー「……フン、来るのが遅いぞ」 上条「てめえ……何してやがる」 セイバー「邪魔を……するなああああああ!!!」 上条「…………」 パリーン セイバー「なっ、エクスカリバーが!!?」 上条「もう止めてくれ。 気は済んだろ」 セイバー「くっ……黙れ黙れ黙れぇ!! 貴方に私の何が分かる!! 上条「てめえがどんな事情を抱えてるかは知らねえ。 けど、少なくとも、腹いせに他人を傷付ける権利なんて、俺は絶対に認めねえ!」 セイバー「……っ!! 風王鉄槌!!」 上条「邪魔だ」 パリーン 上条「……てめえが現世にいる知り合いを心配してるのも、そいつを心から大切に想ってるのも分かる。 けど、それを理由に暴力を振るうのがてめえの正義だって言うのなら……」 セイバー「ば、化け物かこいつは!? と、とにかく身を守らないと……」 上条「その幻想をぶち殺す!!」 ピキーン セイバー「…………え?」【※魔力製の甲冑でガードすれば、つまり……分かるな?】 上条「…………はい?」 アーチャー「…………まあ、当然の結果だな」 ――キャアアアアアアアアアアーーー!!! ――フ、フコウダァーーー!!! ――ワタシマデマキコムナ、タワケーーー!!! 【セイバー そげぶ確認】 【上条 踏んだり蹴ったり確認】 【アーチャー 巻き添え確認】 【船井 消滅済み】
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◆KZj7PmTWPo 氏 氏が手がけた作品 25 飢えた獣と魔法少女 51 淵底に堕ちた鷹 79 これが薬師の選択です 作品に寄せられた感想 「淵底に堕ちた鷹」で、見事なまでの語彙力を見せてくれた書き手。また「飢えた獣と魔法少女」で声優ネタを盛り込むなど、芸の細かい一面も見せる。GJ! 「これが薬師の選択です」では、よりにもよってあのロックに惚れ薬を飲ませてしまった。妄想が膨らみ過ぎて逃げ出すエルルゥやら、コメディもイケる人らしい。どうでもいいけど、そのタイトルって邪気眼ネタですか? ”アニメロワ”という特性を生かした声優ネタは見事の一言。あとは79の元ネタが気になるのだがw -- 名無しさん (2007-01-07 21 51 14) 名前 コメント
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051~100のタイトル元ネタ ※SS作者本人の確認を取っていないものもあるので、間違っている可能性もあります。 話数 タイトル 元ネタ 051 本能字の変(1) バクチ・ダンサー本能字の変(2) その覚醒は希望本能字の変(3) Angel Blossom 『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』OP&ED『selector infected WIXOSS』サブタイ風『魔法少女リリカルなのはViVid』OP 052 真夜中の狭間 ゲーム『Fate/stay night [Réalta Nua]』のBGM 053 ハジケなくちゃやり切れない 『ご注文はうさぎですか?』桐間紗路のキャラクターソング『カフェインファイター』の歌詞 054 タカラモノズ μ sの楽曲 055 夏色の風景 『のんのんびより』越谷小鞠のキャラクターソング 056 Strange Fake 成田良悟によるFateシリーズのスピンオフ『Fate/strange Fake』 057 優勝をめざして 『ラブライブ!』第二期第2話サブタイ 058 スマイルメーカー ご注文はうさぎですか?』保登心愛のキャラクターソング 059 かりそめのメロディ 『グラップラー刃牙』OP『哀 believe』の歌詞 060 墜落する悪 061 領主さまが見てる(?) 今野緒雪による少女小説『マリア様がみてる』 062 逆境に耐える 『結城友奈は勇者である』サブタイ風カモミールの花言葉 063 噴火する平和 064 The World Nightmare 065 闇を欺いて 刹那をかわして 『ジョジョの奇妙な冒険』第二部『戦闘潮流』OP『BLOODY STREAM』の歌詞 066 I ll smile for yours ゲーム『神様と運命革命のパラドクス』綾小路シェリエルのキャラクターソング 067 芸風ノーチェンジ μ sの楽曲『友情ノーチェンジ』 068 騎士王タイプ:トライドロン 『仮面ライダードライブ』の変身形態の一つ 『仮面ライダードライブ タイプトライドロン』 069 それはあなたと雀が言った イギリスのマザー・グース(童謡)『クックロビン』の和訳歌詞「それは私と雀が言った」 070 僕の修羅が騒ぐ 『銀魂』ED『修羅』の歌詞 071 Libra 072 クラッシュ・オブ・リベリオン 『遊戯王ARC-V』OCGのパック名『クラッシュ・オブ・リベリオン』 073 フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ Twitter上に邦訳版が連載されている小説『ニンジャスレイヤー』の第3部『不滅のニンジャソウル』のエピソード 074 犬吠埼風は■■である 『結城友奈は勇者である』 075 Stairway to... ロックグループ「レッド・ツェッペリン」の代表曲「天国への階段(Stairway to Heaven)」 076 Ring of Fortune アニメ『プラスティック・メモリーズ』OP 077 低迷の原因は手前の中から 『神擊のバハムートGENESIS』OP『EXiSTENCE』の歌詞 078 One for All , All for One 079 こんなに■■なことは、内緒なの 『ご注文はうさぎですか?』OP『Daydream café』の歌詞「こんなに好きなことは内緒なの」 080 魔領にて 081 夜と朝の間に 『キルラキル』ドラマCD Vol.2タイトル 082 195×(144+164) 空条承太郎、香風智乃、一条蛍の身長 083 寸善尺魔 『デュラララ!!』の一期サブタイ風 084 その覚醒は重畳 『selector infected WIXOSS』サブタイ風 085 駒鳥殺しの、その行方 086 『犯人』に罪状が追加されました 087 「作戦会議を始めよう」 088 DREAM SOLISTER アニメ『響け! ユーフォニアム』OP 089 変わりゆく平和 090 その少女は切望 『selector infected WIXOSS』第7話サブタイ 091 第一回放送 -この声は冒涜- 『selector infected WIXOSS』サブタイ風 092 Underworld 093 貴方に穏々日和(やわ)らぐ 『結城友奈は勇者である』サブタイ風れんげの花言葉 094 女はそれを我慢できない 『キルラキル』16話サブタイ 095 あげたかったのは、未来で 『Fate/Zero』一期OP『oath sign』の歌詞 096 ノーゲーム・ノーライフ 榎宮祐によるライトノベルのタイトル 097 アイス・ブルーの瞬間 絢瀬絵里のソロアルバムタイトル 098 誰かの為に生きて 『Fate/stay night』OP『THIS ILLUSION』の歌詞 099 世界一歪んだ親孝行 100 それでも『世界』は止まらない Back 【000~050】 Next 【101~150】
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伊達 正義(声優 中井和哉) 伊達 正義(声優 中井和哉)プロフィール 攻略 スチル プロフィール クラス 3年A組 身長 185 体重 Secret 体格 ガッシリ系 頭髪 シルバー 誕生日 5/5 年齢 18 血液型 O 部活 元生徒会長 趣味 料理(腕前はプロ並) 好きな食べ物 乳製品 嫌いな食べ物 わさび(涙が出て嫌だから) 攻略 よくいる場所 なし チョコの好み 甘いもの嫌い 性感帯 正面から見て右腕二の腕(試合中にヒモを巻いてるあたり) ED分岐 ※LuckyEDのみ LuckyED 1章前半の場所選択で駅前を選択。 1章?回目の場所選択で屋上を選択。立花・結城をスルーしたのち登場。 朝倉から体育祭の応援の話で『う~ん…』→『結城くんに限らず』を選択。 2章?回目の場所選択で海を選択。 文化祭の場所選択で廊下を選択。手芸部のチラシを貰わない 3章?回目の場所選択で繁華街 スチル ※全6枚 体育祭(朝倉が体育祭について聞いてきたら『う~ん…』→『結城くんに限らず』を選ぶ) 桂桜フェス(場所選択で廊下、手芸部のチラシを貰わない) 優勝候補者に喝 バレンタイン LuckyED B-1戦勝利
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遊技盤の主は盤上を支配するのか(後編)◆BEQBTq4Ltk ← 部屋に通されるまでに彼らの間に会話は発生せず、ただ黙って足を進めるのみ。 広川の導きにより案内されたタスクであるが、近場にあった椅子を引き寄せ腰を落とす。 周囲を見渡せば壁一面には巨大な液晶が掲げられており、どうやら会場を監視する一室のようだ。 そこにはヒースクリフの姿も映されており、タスクを除く八人の生存者の現状が確認出来る構図となっていた。 「よかった……無事だったか」 半ば脅しの形で言い包めた足立透に不信感が残っていたが、彼は役割を全うしたようだ。 錬成陣の地点にて雪ノ下雪乃、佐倉杏子と一緒に行動している姿を確認しタスクの表情に笑顔が浮かぶ。 しかし、安心することは出来ず。脳内を切り替えると視線は目の前に座る広川を捉えた。 「これからどうするつもりだ。此処まで辿り着いたなら最後まで乗ってやる……次はどうすればいい」 「お前達の予定からして次は鋼の錬金術師による首輪を外すことが重要……ならば、少しは時間を稼げ」 「だからこうしてこの部屋に案内したんだろ。問題はその後だ……お父様? と次に遭遇した時が問題だ」 己の役目は黒幕を欺くこと。 お父様の本拠地に結果として招かれたタスクは唯一、自由に主催へ干渉出来る立場となっている。 無論、言葉を掛けるだけであり、実際に戦局を左右するような権限は持ち合わせていない。 「問題……ならば遭遇しなければいい話だろう」 「……お前は何を言っているんだ」 「この場から抜け出す方法がある。勿論、その準備は最初から出来ている」 広川の言葉を鵜呑みにしては都合の良い方向――主催にとって。 流されるがままになってしまう恐れがあり、抽象的な表現こそ多いがタスクは全ての欠片を拾い上げるように耳を澄ます。 「一応聞こうか。どうやって俺は帰る事が出来る」 「簡単だよ。扉を抜ければそれで終了さ」 質問をした所で、的のない答が返ってくることは予想していた。 切り口を変えてみるかと考えるも、それは無駄な所要だろうとも思ってしまう。 広川の真意を見出すことは不可能なのか。それとも、ヒースクリフのような頭脳に長けた存在ならば可能なのか。 「気になっていたことがある。一つじゃないけど、ヒースクリフさんはどうして首輪を解除されているんだ」 「彼は彼女のお気に入り……と云うよりも、彼だから外れていると言っていいかもしれないな。 私の他にも此度の運営に関わっている存在がいてな。彼女は彼女で動いているのさ――私と同じように」 「どうして黙っていたんだよ……って言っても期待するような答は返って来ないよね。 分かったよ、元々、三つの計画が同時に動いているから他にも内通者が居たことは気になっていたんだ」 「三つ……?」 「俺がこうして時間を稼いでいること。エドワード・エルリックが向かっていること。ヒースクリフさんがもう一人の内通者と接触していること」 なるほど。と、短く呟いた広川は何かを思い返すような遠い目で液晶を見ていた。 タスクの視線も釣られて推移し、そこには御坂美琴以外の参加者がある程度纏まっている光景が映し出されていた。 雪ノ下雪乃、足立透、佐倉杏子。 ヒースクリフ、黒、エンブリヲ。 比較的彼らに近いエドワード・エルリック。 そして一人外れた場所に居るが、着実と近付いている御坂美琴。 ――俺が失敗したら皆に迷惑が……さて、どうしようか。 悩む時間すら惜しい。何せお父様との謁見まで――残り数分。 ◆―― 仕込みの時は終了し、残るは実行のみ。 最後の鍵を握るは鋼の錬金術師。 今宵、彼が欺くは誰になるのか。 全ての事象は因果によって構成され、遊技盤の主はほくそ笑む。 足掻け、足掻け、足掻け。 宙に上げられたコインの結果など、最初から決まっているのだ。 ――◆ 死者の名前が告げられるよりも時は遡る。 学院内のとある一室に身を寄せたエドワード・エルリック。彼の視界に飛び込んだのは発光する四角形状の機械であった。 錬金術が発達した彼の世界に於いて、パソコンなる文明は登場していない。未知なる存在に警戒心が最大限にまで引き上げられる。 予想を立てるならば参加者に支給されているデバイスに近い代物だろう。 液晶と呼ばれる表面に並べられた文字列。真偽は不明であるだ何者かが鋼の錬金術師に語り掛けているようだ。 近場にあった椅子を引き寄せるとそれを液晶の前方に置き、腰を下ろした段階で彼は腕を組んだ。 画面の向こうから接触を図る存在は何者なのか。 お疲れ様などと言っていることから、参加者よりも運営側に近い存在であることが伺える。 そして、運営側の存在などエドワード・エルリックからしてみれば一人しかおらず、脳内に浮かび上がる人物像は自ずと彼を形成する。 ――広川が今になって俺に接触を……? 疑問は残る。はたして本当に運営は広川一人で行っているのか。 名簿に記載されていた複数のホムンクルスが闇に潜むあの存在を連想させた。しかし、エンヴィーは今回の経緯を知らないような素振りをしていた。 こちらを騙すための演技の可能性もあるが、あの状況で嘘を吐くだろうか。敵ながらにしても、思う所はある。 ならば彼らホムンクルスは親から見捨てられたのか。その可能性は大いにあるだろう。かの造り手が情など持ち合わせている筈もない。 会場の中で遭遇し交戦、或いは共同戦線を張ったホムンクルス達。 エンヴィーとプライドは殺し合いの真理を知らずに、エドワード・エルリック達と同じように何も目的を掴めぬまま放り投げ出されたようだ。 彼の睨みではホムンクルスの親玉が関係していると思い込んでいた。美樹さやかを救出した際に辿り着いた疑似・真理の空間からして錬金術に博識のある者が絡んでいるのは間違いないだろう。 依然として主催者と言い切れる存在は広川のみであり、倒すべき相手の全貌すら掴めぬまま、今を生きている。 【突然で驚いているかもしれないが、君に話がある】 さて、どうしたものかと画面の向こうにある真意に想いを傾ける。 エドワード・エルリックに残された時間は少ない。学院内を捜索し高坂穂乃果を見付ける必要がある。 こんなことで時間を消費する暇など無いが、運営側から接触された時点で行動を監視されていると考えて間違いないだろう。 下手な動きをすれば己の生命、下手をすれば仲間の生命にまで危険が及ぶ可能性も考慮する必要がある。 現に学院内に放置されていた少女達の死体と繋げられた人形。その存在が彼を更に苦しめる。 【そう固く構える必要はない。話というのも君達にとってはメリットの塊だ】 こちらの様子が見抜かれていることから監視されていることは確定である。 「……聞こえてはいるんだよな?」 畏まる必要は無い。たとえ相手に生命を握られていようと、媚びることなどするものか。 此度の原因を持つ相手、一瞬たりとも頭を下げるなど死んでも有り得ないだろう。 【その認識で構わない】 「じゃあお前は広川ってことでいいのか? それとも俺の知らない別の人間か……それとも、まさかお前はホムンクルスの――」 【その質問には全部違うと答えよう。重要なことはそこじゃない】 「正体の掴めない奴の言い分なんて簡単に信じれるわけあるかよ」 【こちらも時間が無い。手短に要件を済ます】 「て、てめぇ……っ!」 歩み寄ろうとしない液晶の向こう側に対し、怒号を響かせながらエドワード・エルリックは立ち上がる。 椅子が倒れ無機質な冷たい音が部屋中を満たす中、主催者の人間は何も変わらずに文字列を表示し続ける。 【信用するかどうかは君しだいだ。だが、藁にも縋る思いとは正にこのこと】 わざわざ反感を買うような単語の運び方にエドワード・エルリックの苛立ちは更に募る。 握られた拳は震えており、放つ対象もぶつけるべき存在もいないが故に、怒りは行き先を失う。 「じゃあ話してみろよ。時間が俺も……誰もが同じなんだ。つまらない話だったらぶっ飛ばす」 【話が早くて助かる。君達参加者の首輪を外す手助けをしてやろうという提案だ】 「…………………………は?」 【悪くない話だろう。君達の生命を握るその忌々しい枷を解放してやる術を教える】 次の言葉が脳内に構成されつつあるが、実際に喉元を通ることは無かった。 情報の処理は追い付いている。しかし、あまりにも必要であろう過程を無視した結果の受け入れに時間を要する。 画面の向こう側から示された術は誰もが求め、誰もが諦めた重要課題の一つだ。 「そんなことが出来るならとっくに外している、俺だって何度も試した」 【どれだけ試そうが無駄だ。最初にこの箱庭に施された仕掛けを解除しないことには始まらん】 「仕掛け……? 何を言っているか分からないけどよ、説明はしてくれんだろうな」 首輪の解除に対し行動を取った参加者は多く存在する。 手立てこそ錬金術や超能力、魔法と多岐に渉るが誰もが失敗の壁に到達し、その解除を諦めた。 会場に施された仕掛けが原因となっているようだが、言葉そのものを聞いた段階でまともな判断など不可能である。 内容を知らされずに標題だけが判明している資料への読み込みなど当事者で無ければ分からない。それと同じだ。 言葉一つで納得出来るような状況か。答えは否。エドワード・エルリック以外の存在であろうと返しは同一の旨を含むだろう。 信頼の無い相手、根拠の無い希望、説明すらされない真実。 鵜呑みに出来る許容範囲を超えている。超えるというのも優しいぐらいだ。そもそもとして枠を超越している。 【君も見たことがあるだろう。会場に刻まれた錬成陣に心当たりは】 DIO、後藤、御坂美琴、キング・ブラッドレイ――そしてセリム・ブラッドレイ。 一堂に実力者達が介したあの激戦直後の出来事である。 佐倉杏子、ウェイブ、田村――それにイリヤ。多くの参加者を巻き込んだ死の螺旋。 「俺が読み取れなかった文字に仕掛けがあるのか……?」 【それも含めよう。しかし、根本的に問題があった。仮に錬成を発動したところで波動が流れない仕組みになっていたのだ】 時間軸を超えた先、調律者とゲームマスターが到達した境地へと鋼の錬金術師も手を掛ける。 箱庭の外を包む外壁の真意など、収納された駒同然である彼らに見抜くことは不可能である。 全知全能を誇る千里眼を以てしても、枷が嵌められ全ての色素が濁されたような偽りの空間の前では役に立たないだろう。 信じるに値する情報か。 真偽はどうであれ価値を見出せるのか、掌の上で踊っているだけに過ぎないのか。 「知ったような口で……全部知っているのは本当かもしれない。だけど、俺が素直にはいと頷くと思っているのか?」 【君の言うことは最もだが、そうだな。放送が終了してから二十分後にまた声を掛けさせてもらう】 開幕のベルが鳴り響いてからどれだけの時が経過しただろうか。 上条当麻の鮮血がまってからどれだけの死者が生まれたのか。 エドワード・エルリック。 彼はどれだけの生命を、救えなかったのか。 死神が薄気味の悪い笑顔を浮かべながら、知りたくも無い答案用紙をつまみ上げた。 この世から消失した欠片を追い求めた。 手を伸ばせば光の先にある希望を掴み取れると己へ暗示を掛けていた。 決して叶わぬ幻想だろうと、意思が折れぬ限りは無限の可能性を秘めていると。 嗤わせてくれる。 現実はどうだ。残り生存者八名。 白井黒子から託された高坂穂乃果の名前が告げられ、放送から抑揚の感じられないせせら笑いが会場を包み込む。 救うなど飛んだ笑い話だ。 現実を見ろ。志がどれだけ高かろうと、お前は何を残したのか。 友も、仲間も、何もかも。お前だけを残して全てが消えてゆく。世界は停滞せず、無慈悲にも彼を過去の人間へ落とし込む。 あの子は死んだ。彼も死んだ。そして彼女もまた、この世を去った。 死者の声など二度と聞けず、耳に届く音叉は所詮亡者の嘆き声。 生としての形を保っていた頃の面影など無く、死人は黙り土へと還り生者の足に絡み付く。 「――――――――z______ッ」 教室内に声にならない叫びが澄み渡り、やがて後を追うように机へ拳を叩き付ける音が響く。 鋼の錬金術師の背中がやけに小さく見え、決して後に戻ることの出来ない永遠の後悔が彼を深い海の底へ誘うようだった。 一度墜ちてしまえば、再び這い上がることは簡単な事にならず。 後悔と失念に飲み込まれ二度と光を終えぬ身と成り果てるだろう。そして意味も無く現世を徘徊し、やがて人生に欲を感じずその生涯を自ら終える。 高坂穂乃果は死んだ。 白井黒子に託された彼女は既にこの世を去った。 ウェイブ、田村玲子も死者の呼び声に導かれ、彼が腕を伸ばした先に掴むは空白の刹那。 己すら満たすことの出来ない篝火。払いのけるにも現実は死者の存在を譲らず。 【辛いこともあるだろうがここで立ち止まる余裕は君にあるだろうか】 「……言われなくても分かってんだよ、誰が止まる、もんか……っ」 絞り出したかのように語尾にまで息が届いておらず、決意の表れとは到底呼べないような灯火の声。 震えが止まらない。彼の身体は懺悔に塗れ己の不甲斐なさに腹を立てているだろう。 自分で自分を罰したい程に、この身で許されるならば彼は自らを貶めるだろう。 けれど。 「俺にしか出来ないことがあるって言ったよな。大佐もキンブリーもいなくなっちまったならもう、俺しか錬金術師はいない」 【心変わりか】 「勘違いすんじゃねえ。お前が俺を利用するように俺もお前を利用してやるだけの話だ。 首輪を外せば俺達は一気に自由の身へ近付く。この機会を逃したら今まで死んでいった奴らに会わす顔が――ご託はいいから、話してもらおうか」 全てを利用しろ。たとえ相手が敵であっても。 死中の中で活を見出だせ、奇跡とは諦めぬ者に降り掛かることから奇跡と呼ばれる。 【よろしい、ならば我々はこの時から共犯者となる。よろしく頼むよ鋼の錬金術師】 「……いいから」 【そうか。早い話は先と変わらない。君の力で首輪を外す――それだけだ】 「錬金術によって首輪が外せれるとして、何が方法なんだ。 ただの金属に戻す――って訳にもいかないだろう……まさか、そうなのか?」 錬金術が必要ならばまずはその用途、価値を見出す必要がある。 挑戦など既に過去の遺産であり、画面の奥に居座る人物の語るロックとやらが解除された所でどうなるというのか。 【プライドとの戦いを思い出してくれ。要領はあの時と変わらない】 プライド――セリム・ブラッドレイとの戦い。 佐倉杏子と共に刹那とは云え共闘を果たしたホムンクルス。 後にイリヤ、DIO、後藤、キング・ブラッドレイ、御坂美琴を巻き込み、ウェイブや田村玲子も参戦したあの戦い。 真実を知る者からすれば要領はこの戦いと変わらない。 思い返せ、あの時に己が何をしたのか――けれど、真実は見えず。 最終的に意識を失ったあの戦局に通ずる事象が見出だせないのだ。何が隠されている。 【訂正しよう。今の君にとっては関係のないことだった。美樹さやかの時を思い出してくれ】 思考が纏まらない中、新たな情報だけが追加されてゆく。 真意は不明だがプライドとの戦いを振り返っても得るものは無かった。 ならば新たに示された美樹さやかの時――つまりはエスデスや御坂美琴との戦闘直前の錬成を指すのだろう。 あれは彼女が魔女として戦場に降臨していた時のことだ。 タツミから事情を聞き出し、事前に佐倉杏子と接触していたため持ち合わせていた魔法少女への知識。 美樹さやか本人の身体と魔女の残骸であるグリーフシード。そして生きている彼女の精神。 全てを繋ぎ合わせた結果、かつて弟の魂を鎧へ憑依させた錬成を基礎に行った奇跡の錬成。 辿り着いた先は疑似・真理の空間と呼ばれる心象風景の世界。 相対するは美樹さやかの内なる影――シャドウ。己とは異なる存在であり、己でもある仮面。 最後は彼女自身が己の仮面を受け入れることにより、奇跡を引き起こし魔女から現世へと帰還。 「俺を――俺達ごと錬成するつもりか」 プライドとの戦いを思い出せ。 正確に伝えるとなると、エドワード・エルリック自身が自身を錬成したあの瞬間を指していた。 しかし、それは正しき時間軸を進んだ鋼の錬金術師が知りうることであり、現在の彼はその事実を知らない。 【薄々は気付いていると思うがこの空間は普通じゃない。 通行料は首輪そのものが役割を果たすから心配する必要は無い】 そうなると少しだけ、僅かにだが希望は見えてくる。 手段としては賭けに近い。けれど、その賭けに乗らなければならない程に追い詰められているのも事実である。 美樹さやかの時でさえ分の悪い賭けだった。故に今回の賭けに怖気づくなど今更な話でもある。 「お前の言っていることは分かった。逆に聞くがそのロックって奴は大丈夫なのか」 【広川が手を打っている。安心してくれ】 「俺はお前も広川も信用ならねえ。何か一つでもいい、信頼に値する情報を明かせないのか」 「強気だな。その気になれば私は君の首輪を爆破出来るぞ」 「じゃあそうしてくれ。わざわざそっちから干渉してんだ、追い詰められているのはそっちも同じだろ」 残る材料は信頼。 元より利用されるならば利用してやるという魂胆だが、一つの条件すら不明な相手との共同戦線など巫山戯ている。 嘗てグリードと組んだ時も、グラトニーの中から脱出する際にエンヴィーと組んだ時も。 敵でありながら同じ目的のために手を組んだ時がある。現在の状況はこれらと変わらない。故に 「お前の目的は何なんだよ。俺に、俺達に力を、知恵を貸す理由はなんだ」 たった一つの欠片さえ証明されれば駒となってやる。 そして共同戦線を張るからには俺が死ねばお前にも死んでもらう。 『……ははっ、ごめんね。ちょっと手が塞がってたから』 「――――――お、女?」 一室に響いた声にエドワード・エルリックの身体が固まった。 広川と異なるとは聞いていたが、声色は自分と同程度ぐらいの年齢としか思えない。 「お前……女だったのか」 『性別は関係ないよね。さっきまでヒースクリフ達と会話してたから貴方とは文字で会話していたの』 「ヒースクリフ……生きているのか!?」 『まずはそこからか……そう、彼は生きている。そして首輪が外されているの』 「首輪が外されている――だから放送で名前が呼ばれたのか?」 『さすがだね。話が早くて助かる……彼らには貴方の役割を伝えて、錬成陣の場所に誘導済みだから』 「……俺がお前の話を蹴ったらどうするつもりなんだよ」 『蹴らない。貴方はこの提案を蹴らない……信じていたから』 どうやら自分の知らない所で既に引き返せない段階にまで話が進んでいるらしい。 ならば彼も覚悟を決めぬ訳にもいかぬ。元より腹は決まっているのだ、ここまで来れば運命共同体である。 「じゃあ俺は錬成陣を目指せばいいんだな? だけどよ、錬成をするって簡単に言うけどな……」 『分かってる。これから貴方のデバイスに各世界のデータなり必要な情報を送り込む。 辿り着くまでに一通り読んでくれれば問題ない……筈。あとは貴方次第だから頼んだよ』 「……どっちにしろ簡単に言うじゃねえかよ。それでいいのか? お前だってこんなことすりゃ広川――なあ、一ついいか」 彼女は口を揃えて錬成と言葉を紡ぐも錬金術師の立場からすれば式も成り立たぬ術など成功するものか。 必要な情報を送ると言われ、はいそうですかと二つ返事で答えれるならば世の中の生物全てが錬金術師になれるだろう。 それでもやるしかないのなら、やってやる。しかし、気になることが多すぎるのだ。 彼女が干渉すればそれは広川にとって裏切りも同然だろう。 「広川やお前以外にも俺達の敵はいる……よな」 『そうだね――お父様。こう言えば貴方には伝わると思う』 「……そうかよ」 嫌な予感とは当たるものだ。 エドワード・エルリックの額には汗が浮かんでいた。 ◆―― 欠片は全てに行き渡る。 これで正真正銘の運命共同体。 次なる行動はただ一つ。 約束の地へ急げ。 ――◆ 大地を駆け抜けろ。 建物を飛び出してから一切の休憩を挟まずに彼は約束の地を目指す。 『ホムンクルスが関わっていたことは不思議じゃないようね。深くは聞かない……でも急いで。 お父様はまだこの状況に気付いていないから。それでもいずれは気付く。時間を稼いではいるけど、それにも限界があるから』 デバイスの液晶に流される単語の羅列に目を通しつつ、脳内で処理するは未知の方程式。 通行料は首輪、行く先はかの空間。材料も人間も揃っている。あとはやるだけ、やるだけである。 『それと私の目的だけど――救いたい人がいる。殺し合いに関わっていながら巫山戯た意見だとは自分でも思っている』 ヒースクリフが生存しているとなれば己を含めて参加者は残り九名。 エンブリヲ、足立透、御坂美琴。立ち塞がる壁は今も生きており、その先にはフラスコの中の小人が構えている。 後に矛を交える相手であるが、首輪――生命を握られたまま戦闘となれば有無を言わさずこの世を去ることになるだろう。 『今はそれだけを信じてほしい。貴方が首輪を外すことに成功すれば黙ってでもお父様と衝突することになると思う。 その中できっと私は貴方達に会うかもしれない。その時は頭を下げて謝罪する――だから、今だけは信じて。私と貴方達は運命共同体だから』 この腕は誰一人として救えずに。 己だけが生き残り、託された少女すら救えずに参加者は残り九名にまで減ってしまった。 『貴方なら分かっていると思うけど、お父様がこの状況に気付いている可能性もある。だから、急いで』 もう、誰も失うものか。 この腕で救えるのならば、どんなに泥を被ろうが、血を流そうが。 最後まで抗い続け、黒幕を表の舞台に引き摺り下ろすまで。 『幸運を祈る――こんなことなんて言える立場じゃないけど、私は貴方が成功させることを祈っているから。時間があれば私とヒースクリフの会話を録音したデータも聞いてほしい』 意思が折れぬ限り、彼は最後まで挫けない。 太陽が天高く昇り、箱庭の会場を照らす中。 鋼の錬金術師は約束の地を目指し、大地を駆け抜ける。 【F-6/二日目/朝】 【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、精神的疲労(大)、全身に打撲、右の額のいつもの傷、黒子に全て任せた事への罪悪感と後悔、強い決意 [装備]:無し [道具]:デイパック×2、基本支給品×2、ゼラニウムの花×3(現地調達)@現実、不明支給品0~2、ガラスの靴@アイドルマスターシンデレラガールズ、 パイプ爆弾×2(ディパック内)@魔法少女まどか☆マギカ、千変万化クローステール@アカメが斬る!、学院で集めた大量のガラクタ@現地調達。 [思考] 基本:主催の広川をぶっ飛ばす。 0:西へ向かい、首輪を解除するために錬金術を行う。 1:大佐……。 2:前川みくの知り合いを探したい。 3:エンブリヲ、御坂、ホムンクルスを警戒。ただし、ホムンクルスとは一度話し合ってみる。 4:一段落ついたらみくを埋葬する。 5:首輪交換制度は後回し。 6:魔術を解析したい。発見した血の練成陣に、魔術的な意味が含まれていると推測。 [備考] ※登場時期はプライド戦後、セントラル突入前。 ※前川みくの知り合いについての知識を得ました。 ※ホムンクルス達がこの殺し合いに関与しているのではと疑っています。関与していない可能性も考えています。 ※仕組みさえわかれば首輪を外すこと自体は死に直結しないと考えています。 ※狡噛慎也、タスクと軽く情報交換しました。 ※エスデスに嫌悪感を抱いていますが、彼女の言葉は認めつつあります。 ※仮説を立てました。 ※お父様が裏に潜んでいることを知りました。 ※デバイスに各作品世界の情報が送られています。 ◆―― 選択の時、来たれり。 ――◆ 願いは決まったかね。 そう告げられたタスクの心境を察せれる存在など広川しかいないだろう。 彼は優勝者の背後に立っており、補助をするように声を上げた。 「別室で話していましてね、どうも我々に願いをかなえられるのは不服だと申している」 「お前達に叶えられる願いなんて、こっちからお断りだ。そんなことはアンジュも……誰も望んじゃいない」 彼らの言葉を借りれば『聖なる器を奇跡で満たしたが故に、願いが叶う』 大切な人を取り戻そうと、主催者達の息が掛かった願いなど、誰が望むのか。 人生を弄び、その最後まで茶番に巻き込もうとするならば、その所業、許してなるものか。 「人間とは愚かな生き物だ。目の前に叡智があるというのに何故、拒む?」 「愚かな生き物だからですよ。人間は醜い己を偽り、こんな時でも綺麗事で自分の意思とやらを優先する」 ――お前はどっちの味方なんだ……。 広川の言葉はその場凌ぎの虚偽にしては重みが感じられ、まるで本心からの発言に聞こえる。 話術に長ける人間ならではの演技だろうか。彼からは表と裏の境界線が感じられずにいた。 場の支配権を彼に委ねたタスクであるが、相手であるお父様から微塵も生気を感じない。 しかし、何処か感情を漂わせており、彼の真意も計り知れずにいた。 「ならばお前はこのまま……何も願いを叶えずに元の世界へ還ることでいいのか」 「お前達が還してくれるなら……そうするね。俺は元の世界へ戻れるのか?」 話には裏が存在する。 大勢の人間を集め殺戮の宴を開催した彼らに常識が通用するとは最初から思っていない。 首輪の解除や偽装の優勝を含め、彼らを全て信用すれば、死ぬのは己である。 最悪の場合は戦闘も発生しよう。懐の刀に手を伸ばし――。 ――アヌビス神は時計塔に置き去りのままか。 相棒とも呼べる刀身が手元にあらず。 他に武器を持ち合わせてはいるが、彼の中で勝率が大幅に減ってしまう。 されど、心境を悟られるな。足元は最初から見られている。ならばせめて底は見せるな。 「可能だ……お前達は知っていると思うがあの会場にはロックというつまらぬ枷が存在している」 「ロックを解除すれば色々と解放されるのだが……その一つに扉の先の選択肢が広がる仕組みになっている」 「……扉の先の、選択肢……それが皆の世界ってことか」 数刻前に意識を取り戻した時を気付かなかったが、お父様が居座る玉座の奥には巨大な扉が置かれていた。 彼らの言葉を処理し、必要な情報を連結するにこの扉を通れば元の世界へ帰還出来るのだろう。 不思議とは思わない。平行世界の移動を個人単位で成功させる調律者を知っている。 寧ろ、扉の存在が可能性を大いに引き上げているようにも感じていた。 「でも最後のロックを解除する前に俺は優勝した。だから――」 「それは私がサービスで解除しておいた……自分達の力で解除出来なかったが、仕方あるまい。 遅かれ早かれお前達は足立透と交戦していた。黒が駆け付ける可能性もあったが、後に御坂美琴も合流しただろう。 最悪の場合はエンブリヲすら敵に周りロックの解除どころの話では無くなるからな……お前達の位置関係は皮肉にも無理だった」 仮にタスク達が時計塔に寄っていなければ。 佐倉杏子は足立透に殺されていただろう。エンブリヲが本田未央を見捨てていなければ、鉢合わせする可能性もあっただろう。 学院での戦闘後に御坂美琴が西へ来ていたら。彼らの生命は塵のように消えていただろう。 「感謝の言葉は必要ない。求めていないからな」 「ならそうさせてもらうよ……誰が言うものか」 共同戦線の運命共同体。 内通者と参加者の賭けであるが、礼を述べる間柄などであるものか。 主催者がいなければそもそも殺し合いは始まっていない。 「つまらんな……まぁ、いい。 還るならばそこの機体に乗り込んで還りたまえ。もうこちらからの興味は失せた」 「機体……っ!?」 お父様の指がトンと台座を突いた時。 タスクの左方に召喚されたのだ。何も存在せずに無だった空間。 物体すら感じられぬただの空間に構成されるは見慣れた機体だった。 その光景に驚きを感じながらも近付くタスクだが、目を疑った。 見慣れた機体は彼がよく知る存在と同一であり、紛い物と呼べない正真正銘の彼の機体。 粒子のように構成されその姿が完全に顕現された時、帰還の手段が整ったと言える。 「これは俺の――隠し持っていたのか?」 「何を言うんだ。支給品の段階で気付くべきだろう」 「広川……それもそうか」 小型の飛空艇。 タスクからすれば相棒であり、アンジュとも一緒に跨った愛機が主を迎えに馳せ参じた。 コックピットブロックをこじ開け、内部を確認。 各種メーター良好、エネルギーも問題なし、センサーも正常に作動していた。 ――本当に、帰れるのか……。 座先に跨がり、各機関を作動させる。 静まり返った空間にエンジン音が何処までも響き渡る。 ――反響具合からして……とてつもなく広いのか? 空間の奥行きを感じながら、レバーを握るが若干だが機体が上がる。 手入れもタスクの知っている機体と同じであり、今すぐでも飛び出せる段階だった。 ――時間稼ぎはこれ以上無理……か? 実際に稼げたのは一時間程度だけど……皆は大丈夫だろうか。 このまま合流したいところだけど、これからどうするべきか。このまま俺だけが還るなんて有り得ない。 雪乃が、杏子が、皆が……まだ、戦っているんだ。俺だけ悠々と生き延びるなんて――――――――――――なっ。 「そのままこの空間から消えれば首輪が爆発しお前は死ぬ。 最後の人間がそんなことで死ぬとは興醒め以下……これは当然の結果だよ」 モニターに表示される文字列と解除された首輪。 広川の干渉だろう。己の選択に悩むタスクの意思と反し、彼の首輪が解除され機体から転がり落ち、床に落下した。 金属音が響く中、モニターには広川の新たなる言葉が表示されていた。 「扉の行く先はお前が念じた空間に繋がる仕組みになっている。 故に元の世界以外にも繋がっている――つまり、会場にも繋がっている」 ――そうか。 「広川、聞こえているんだろう?」 「あぁ。安心しろ、エンジン音に消されお父様には届いていない」 レバーを握り、ペダルに足を掛け、たった一言を告げる。 「礼は言わない。全てを終わらせた後に、また会おう」 その言葉を最後に機体が上昇すると、奥の扉が解放された。 そしてペダルを踏み込み機体を徐々に加速させ――制空の騎士はその空間から姿を消した。 「これで裏切り者が判明したな――――――――――――――広川」 ◆―― 今宵の勝負、軍配は黒にあり。 ――◆ 重力とは別の圧力が機体とパイロットに襲い掛かる。 眼前に広がるは電子空間のように滲む世界の壁。世界の内側から外側を覗いているような感覚だった。 「待っていてくれ……雪乃、杏子、皆……!」 想いの力が彼を導く天の煌めきとなる。 自由を束縛されようが、正義を抑制されようが、運命に囚われようが。 この想いだけは誰にも止められてなるものか。 自分のやるべきことは決まっている。それを成し遂げるためにも――想いを絶やすな。 彼の周りからは多くの仲間が消え、最後に残るは最悪の結果であるエンブリヲのみとなってしまった。 このまま自分だけが帰還したとしても、調律者はどんな手段を使ってでも再び現れるだろう。 「もう誰も失わないために――俺はッ!」 魂の叫びに呼応し機体が加速し始め、やがて彼女達の鼓動を肌で感じることとなる。 遠くに僅かながらに見えるは雪ノ下雪乃と佐倉杏子――おまけの足立透の姿。 想いに導かれタスクは着実に会場へと近付いており、到着は最早、秒読みの段階だった。 エドワード・エルリックはまだ到着していない。 しかし優勝者がこうして元の世界へ戻ろうとしているのだ。 お父様のマークも外されることだろう。時間稼ぎの役目は果たした――後は錬金術師の仕事である。 仮に会場に主催の介入が発生した場合には首輪を外した自分が盾となる。 この身で救える生命があるならば、最後の最後まで仲間を護る騎士となろう。 もう誰も死なせるものか。己でも諄いと感じる程の決意を胸に――帰還するは会場。 「……………………………………機体の制御が、きかな、い……ッ!?」 急停止による重力が身体に襲い掛かり、衝撃によって吐血するも意識を失ってはいられない。 振り返ると見たことも無い光景が広がっており、それでも状況を把握するには充分すぎる情報だった。 無数の黒き腕が機体を奈落の底へ引き摺り下ろそうとしているのだ。 群がる黒き腕は亡者の如く、呼吸の時間すら於かぬまま機体の半分を占領。 満足すること無く腕は操縦者たるタスク目掛け進軍を始め、彼の元まで到達するに時間は必要ない。 最初は左腕。強引にレバーから引き剥がされるとガラ空きになった上体へ影のように群がる。 やがて上半身を覆い潰すと、ペダルから足が離れ機体のコントロールを失うも、機体自体が影に潰される。 最後の仕上げにタスクの首を締め上げるように巻き付き始め、彼の抵抗も虚しく、正体不明の黒き腕が機体を制圧してしまった。 「今の気分はどうかね」 「ほ、ほむん……くる、す……!」 空間に直接語り掛けるように響いたその声は聞き覚えがあった。 忘れる筈が無い。たった数分前に聞いた此度の黒幕――フラスコの中の小人。 彼の声が響いた時、黒き腕の正体も彼の息が掛かった存在、或いは能力なのだろう。 以外にもタスクの思考がハッキリしていた。 こんな状況であろうと、頭が回転しており状況を簡単に飲み込んでしまう。 結果が弾き出す答えなど認めなくても一つのみ。最早、最初から決められていたのだ。 「………………ぁ、だ……」 締め上げられた喉元に阻まれ声が届かず。 けれど、折れぬものか。この世は諦めた者から朽ち果てる。 最後の最後、その刹那まで彼は抗い続ける。 「いつから……気付いていた」 用意周到。タスクの進軍を阻む黒き腕の登場は出来過ぎている。 お父様は――欺きに気付いていた。答えは一つしか無い。 ならば、いつから見抜かれていたのか。己の生命は砕け散ったとしても、仲間はまだ生きている。 彼らにも災厄が襲い掛かる可能性があるのだ。 そうなれば意地でも会場に辿り着き、彼らを救うために。 この身、最後まで戦い続ける――のだが、お父様はどの瞬間から見抜いていたのか。 「何を言っている。最初からだ……お前と広川が接触を始めた時点で気付いている」 「そ、んな……じゃあ、俺た、ちは……最初から全部……お前の思惑ど、おりに……っ、く、そ……」 黒き腕が彼の視界すら覆い被さり、文字どおりの影でしか彼を認識することが出来ない。 包まれた素顔には後悔の念が浮かんでおり、唇を噛み締め、己の不甲斐なさを嘆いている。 元より最初から博打だった。この賭けを行わなければ今でも殺し合いを強要されていた。 淡い希望を無理に肥大化させ信じていた。それは甘んじて認めよう。 けれど、それでも絶望に塗り潰される現実が彼を苦しめる。 この計画が失敗すれば――全ての参加者が死ぬ。あのエンブリヲですら生命を落とす。 「薄々は気付いていただろうが泳がせたのだよ。裏切り者を炙り出すために」 「な……に?」 「私の計画にとって邪魔な存在が居ることは気付いていた。まさかこうも簡単に尻尾を出すとは……人間とは愚かな生き物だ」 嵌められたのは参加者。そして――広川。 全ては最初からホムンクルスの掌の上。予定調和とは彼のための言葉であった。 賭け事を行うにも全ては遊技盤の主が支配していた。勝利を導き出せど、それは罠である。 「広川も、俺た、ちも……お前に負けて、たまるかよ……ッ」 強がりの言葉を吐き捨てると同時に、最後の力を振り絞ったタスクは右足をペダルへ叩き付ける。 機体が急加速し黒き腕の拘束がある中で、その呪縛から逃れようと前へ進み始める。 このまま終わってなるものか。最後までお前の思惑通りに進めてなるものか。 ――行き先はお前の居場所だ……機体ごとぶつければ……っ 徐々に機体の速度が呪縛を上回り始める。 タスクが想う先は先程の空間であり、最後の足掻きである。 ホムンクルスであろうと機体の質量を高速で衝突させれば、発生するエネルギーで圧し潰せる。 ――想いだけでも、この想いだけでもお前に 生命を燃やす時とは正にこの瞬間を指すのだろう。 機体の行き先に表示されるはつまらぬ表情を浮かべ、玉座に居座るホムンクルス。 真理の扉が彼の居場所を制定し、全ては整った。タスクにとって、最後の賭けが此処で決まる。 「っ――うぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」 明日へと託す最後の咆哮と共に、機体の速度が黒き腕を振り払う。 呪縛を失った機体は誰にも止められること無く、ただ倒すべき対象に向かい、進むだけ。 タスクの身体は足立透との戦いで限界を迎えている。 事前のキング・ブラッドレイとの交戦にて一度は死の境地へ片足を踏み込んだ。 雪ノ下雪乃と佐倉杏子、そしてアカメに救われたその生命だが、最早此処まで。 ならば救われたこの生命。 最後は彼女達のために――未来へのために。 「一つ勘違いをしているな。 広川は私の味方……最初から騙されていたのはお前達だけだ」 そして真理の扉は閉ざされた。 彼の表情を知る者は誰一人として、いない。 お父様であれど、広川であれど、その最後を見届けた存在は非ず。 それでも機体は加速を続け――行く先は閉ざされた扉。 回避不可能な衝突が発生し、空間には機体の爆発が響き渡る。 その瞬間に。 絶望の宇宙に吹き荒れる嵐が全てを満たした時。 滅び行く世界の中で、明日を求めた一人の男の無念が、微かに響いていた。 【タスク@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 消失】 無能、強打、虚無、杜撰 どれ一つとっても戦場では命取りとなる それらをまとめて無謀で括る 仕組まれた作戦、仕組まれた地獄 行きも怖いが帰りも怖い 言うなれば運命共同体 互いに頼り、互いに庇いあい、互いに助けあう 一蓮托生、既に血肉は分け合った 捻れて繋がる二重螺旋のように 精妙にして巧緻、大胆にして細心 この作戦が成功する時、共に歓喜の祝杯を轟かせよう 嘘を言うな 差異に歪んだ暗い瞳がせせら笑う 何を勘違いするか 全ては最初から掌の上で踊り狂っていただけ お前も お前も お前も 所詮は予定調和内の叛逆だ 時系列順で読む Back 第五回放送 Next ラストゲーム 投下順で読む Back 第五回放送 Next ラストゲーム
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179 WILD CHALLENGER(前編) ◆dKv6nbYMB. 「......」 キング・ブラッドレイは考える。 南方で起きた大規模な爆発の音。 彼がそれを聞きつけたのは、御坂美琴が眠りについてから程なくしてのことだった。 彼が悩んでいるのは、これからの方針について。 あの爆発音のもとへ向かうか、それともこのまま目的の地、アインクラッドへと進むか。 そもそもアインクラッドを目的地としているのは何故だ。 それはヒースクリフも目指しているかもしれないという可能性を託しているだけだ。 しかし、このゲームが始まってから一日が経とうとしている。 彼が会場全体を動き回っているとしたら、既に訪れ去っている可能性も低くは無い。 つまり、アインクラッドとやらに行っても、ヒースクリフに会える保証はないわけだ。 それに対してあの爆発音。 流石に、あれほどの爆発をまともに受けていれば生きてはいまいが、あれが起きたということは、少なくともあそこに何者かがいたということだ。 生存者がいなくとも、あの爆発に惹かれる者もいるだろう。 状況を把握しようとする者。 無謀にも被害者たちの生存を願う者。 戦闘を望み、脚を運ぶ者。 ヒースクリフではなくとも、参加者に遭える可能性は前者より高い。 「ふむ...」 と、なるとだ。 このままアインクラッドに向かうよりは、あちらに向かった方が益はある。 (そうなると、彼女を連れていくべきではなさそうだ) 回復結晶とやらで怪我は回復させたものの、疲れて眠っているところを見ると、全てが元通りという訳ではなさそうだ。 そんな彼女を戦場へ連れて行き、なにか妙な失態を冒そうものなら目も当てられない。 デイバックに入れて向かってもいいが、彼女を庇いながら戦うのは少々面倒だ。 ならば、ここに残し、体力の回復に専念させた方がいい。 もしかしたら、なにものかが襲撃してくる可能性もあるが、その時はその時だ。 それで命を落とすようなら、自分の同盟相手には不釣り合いだっただけの話だ。 念のため、『一旦南へ向かう』とだけ書置きを遺して、御坂をイェーガーズ本部の一室へと放置。 キング・ブラッドレイは疾風のごとく爆心地へとその足をすすめた。 同行者の体力の回復。襲われた時の責任はとらない。 この二つが既に矛盾しており、その矛盾から御坂美琴との不和を生む可能性は充分に高い。 彼は、そのことに気が付いているのだろうか。きっと気が付いている。 それを承知だからこそ――― 【D-4/イェーガーズ本部/一日目/夜中】 【御坂美琴@とある科学の超電磁砲】 [状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、深い悲しみ 、自己嫌悪、人殺しの覚悟 睡眠 [装備]:コイン@とある科学の超電磁砲×2 、回復結晶@ソードアート・オンライン(3時間使用不可)、能力体結晶@とある科学の超電磁砲 [道具]:基本支給品一式、アヴドゥルの首輪、大量の鉄塊 [思考] 基本:優勝する。でも黒子たちと出会ったら……。 1:橋を渡りキング・ブラッドレイと共にアインクラッドに向かう。 2:もう、戻れない。戻るわけにはいかない。 3:戦力にならない奴は始末する。 ただし、いまは積極的に無力な者を探しにいくつもりはない。 4:ブラッドレイは殺さない。するとしたら最終局面。 5:殺しに慣れたい。 [備考] ※参戦時期は不明。 ※槙島の姿に気付いたかは不明。 ※ブラッドレイと休戦を結びました。 ※アヴドゥルのディパックは超電磁砲により消滅しました。 ※マハジオダインの雷撃を確認しました。 次なる戦場を求めて歩き出したエスデス。 しかし、ふと別の考えがよぎり、その足を止める。 「...あれほどの爆発、力に自信のある者なら放っておかないだろうな」 あの爆発は周囲に響き渡っている。 必ずやなにかしらの理由で惹かれる者はいるはずだ。 状況を把握しようとする者。 無謀にも被害者たちの生存を願う者。 戦闘を望み、脚を運ぶ者。 ただの一般人が脚を運ぶのはまずないが、少なくともそれなりに腕に自信があれば訪れるはずだ。 それに、戦いの連続でそろそろ小腹が空いてきたところだ。 少々疲れた身体を癒すのも兼ねてここで待ってみるのも一興だ。 地に腰を落ち着け、ごそごそとデイパックから取り出したのは、巨大な魚の丸焼き。 『アヴドゥル。お前の支給品に魚介類の詰め合わせがあったな。小腹が空いたからひとつ焼いてくれ』 『...私の炎はそのためにあるわけじゃないんだがな』 能力研究所へ向かう道中、そんな会話をしながらアヴドゥルに焼かせた魚だ。 それを食す前に研究所から立ち昇る煙を見つけたために食べる機会がなかったのだ。 焼き魚に、自らが破壊した駅員室の破片を付きさし串替わりにして、腹に被りつく。 うむ、美味い。 流石に冷めてしまっているが、この食べやすさは中まで火が通っていた証拠だ。 咄嗟の注文でも、極めて冷静に、丁寧に炎の威力を扱える男だ。 彼の本気を見れなかったのは悔いが残るし、改めて惜しいと思える人材だ。 尤も、部下ですらない男の死をいつまでも引きずる彼女ではないが。 ...己の半身が焼かれた直後に焼き魚を平気で喰えるような人間は、会場広しといえども彼女くらいだろう。 (しかし、こいつは存外便利なものだ) 焼き魚を頬張りながら、目の前に横たわらせたまどかとほむらの死体を見ながら思う。 ロイ・マスタング。 彼が自分をここまで追いつめ、いや、そもそも仮にもセリューの上官である自分を殺すと決意したのはこの死体の影響が大きい。 これが無ければ、おそらく彼は中々殺す決意をしなかっただろうし、したとしても中途半端な覚悟で終わっていた可能性も高い。 この死体を卯月が作ったと知ったからこそ、彼は卯月諸共エスデスを殺す決意に踏み出した。 そのため、どうせならもっと有効活用できないかと思い、あらかじめ回収しておいたのだ。 (怒りとは視野を狭めやすいものだが、時には大きな力となる。奴はそのことを改めて教えてくれたからな) 感情は時に戦局を覆す大きな力となる。 あれを見て感情を滾らせるような者とは、是非戦ってみたいものだ。 例えば、美樹さやか。 まどかからは、正義感が強く感情的になりやすい魔法少女だと聞いている。 あの死体を見せれば戦わない理由はないだろう。 例えば、佐倉杏子。 彼女とはDIOと戦う前に交戦したが、あの時はグランシャリオを使わせているにも関わらず、呆気なく勝負がついてしまった。 あれの相性に適合していないこともあったのだろうが、ウェイブ以上に精神に乱れがあったせいだろう。 そのウェイブも、覚悟を決めれば完成された強さの限界を超えてみせた。 ならば、ウェイブやマスタング同様、直情型に思えた彼女もまた、死体を見せて怒らせればもっと楽しめるかもしれない。 例えば、エドワード・エルリック。 彼とまどかたちは直接の面識はない。 しかし、前川みくの首を切断したことだけでも怒っていた男だ。 マスタングが死んだことも併せて教えてやればそれはそれは烈火のごとく噛みついてくることだろう。 「おっと。エドワードには一応首輪の解除を頼んでいたのだったな」 まあ、敵対するぶんにはなにも問題はない。 そのぶんお楽しみが増えるだけだ。 「さて。誰が最初にやって来るか...」 氷の女王は、己の空腹を満たしつつ訪れるであろう来客を待つ。 数刻後、完食した魚の骨が地面に捨てられるのと同時に、南方から電車が一台やってくる。 電車が半壊した駅に停まると、乗客がその姿を現した。 「ようやく来たか。さて、お前は私を愉しませてくれるのか?」 「あなたの愉しみなど知りませんが...その命、有意義に使わせていただきます」 ☆ ヒースクリフ―――茅場晶彦は考える。 (承太郎、ジョセフ・ジョースターは脱落し、ゲームに乗っているであろう者はほとんど呼ばれていない) コンサートホールで合流した面子は既に半分となり、友好的な関係を作れていたジョセフもまた死んだ。 モハメド・アヴドゥル、空条承太郎、鹿目まどか、暁美ほむら、ジョセフ・ジョースター... 思えば、エスデスと敵対はしなかった面子はことごとく死に至っている。 エドワードはどうなっているがわからないが、足立も足立で後藤を押し付けられるなど散々な目に遭っているらしい。 まるで死神だな、と思うのと同時に、そんな中でもこうして五体満足でいられる自分は幸運だな、となんとなく思う。 (とはいえ、銀に繋がる有益な情報はまだ得ていない。黒くんが見つけていれば話は早いが...) 地獄門で黒にはカジノ方面を探索するように伝えてある。 銀がそちらにいれば何の問題もないが、万が一南西方面にいた場合は厄介だ。 銀は盲目で、一人ではなんの戦闘力も有していないときく。 おそらくは腕の立つ者が同行しているのだろうが、もしもその保護者が籠城を決め込んだ場合、銀を確保するのが非常に困難になってしまう。 それに、合流が遅れれば遅れるほど、銀を失うリスクは高まってしまう。 (少し予定を早めるか) もともと、銀を確保してから南西を見て周る予定ではあった。 しかし、先程例を挙げたように、南西付近にいた場合非常に厄介なことになる。 ならば、銀は黒や学園にいる者たちと出会えていることに期待して、南西側を先に調査しよう。 それに、自分は南東側は黒やアカメたち、北西側はまどかや承太郎、北東側はこの目で情報を得ているが、南西に関してはほとんど情報を手に入れていない。 云わば魔境のようなものだ。 RPGでも、魔境には重大なイベントが隠されているのはお約束だ。向かう価値は充分にあるだろう。 「尤も、ゲームの筋書き通りとはいかないだろうがね。さて、この選択がどう出るか」 ☆ 魏が電車にて北上している最中のこと。 突如、大規模な爆発の音が鳴り響き、同時に電車が一時停止した。 どうやら、爆発の影響で線路に異常がないかを確認しているようだ。 魏は考える。 放送で聞いた首輪交換機について。 報酬が得られなかった首輪とは、十中八九自分のものだ。 電車から降りて取りに戻るのも悪くはないが... (たしか、あの首輪はランク1。入れ直したところで大したものは貰えないでしょうね) それに、首輪は自分が生存している間はずっと保管しているらしい。ならばそう焦ることもあるまい。 と、なればこのまま北上するのが賢い選択だろう。 あの爆発を受けて生きている者はそういない。 生きていても、満身創痍なのは確実だ。 電車の中で、支給品にあったうんまい棒なる菓子やパンを食しつつ身体を休める魏。 あまり腹は膨れなかったが、何も食べないよりはマシだ。 それからしばらくして。 線路に異常なし、と判断した電車は再び北へと向かう。 やがて、辿りついた先にいたのは、一人の女。 魏が今までに見てきた女性の中でもかなりの美貌といえるが、左半身には、全体を覆う火傷の痕が痛々しいほどに刻み込まれている。 自分も人のことを言えないが、と思いつつ、黒の死神に刻まれた火傷の痕をなぞる。 そして、気付く。彼女の足元に転がる見覚えのある半分の顔に。 「ひとつ聞いておきましょうか。"ソレ"はあなたがやったのですか?」 「ん、ああ、こいつか」 エスデスは、地面に寝かしていた死体を掴み、持ち上げる。 「そういえば、おまえはこいつを襲っていたな」 「...?」 「お前は知らないだろうが、私もあのコンサートホールにいたのだよ」 「そうですか」 「それで、だ」 エスデスは、"まどか"側の頬をつまみ、軽く引っ張ってみせる。 「私がお前が殺そうとした"こいつ"をこうしたとして―――お前はどうするんだ?」 まどかは魏が狩りそびれた獲物だ。 そんな獲物を横取りされて頭にこない狩人はいないだろう。 「別にどうも思いませんよ」 だが、契約者は合理的だ。 魏がまどかを襲ったのはあくまでも優勝への第一歩に過ぎず、その過程の戦闘になど想いを馳せることもなければ、逃がした標的を横取りされようが思うところなどない。 「なんだつまらん」 「ただ」 だが、魏はまどかに借りがある。 見事に一杯食わされ、あまつさえ肩に傷を負わされるという屈辱が。 そして、その屈辱を晴らしたかったと思うのは、契約者としてではなく魏志軍という一人の人間の意思だ。 「彼女には借りがある。彼女に返せなかったぶんは、同行者であったあなたに清算してもらうことにしましょう」 「八つ当たりというやつか。それも悪くない」 静かに笑みを浮かべる魏と、戦いへの期待を膨らませ、凶悪な笑みを浮かべるエスデス。 両者が互いに手をかざすのと同時。 水流と氷がぶつかり合い、戦いは始まる。 「懐かしいな、その帝具」 「あなたもこれを知っているのですか...まったく、それほどまでに有名な道具なのでしょうかね」 「それは元々私が部下に与えたものでな。お前がどれほど使いこなせるか、見せてもらおう」 魏が操るのは、駅員室の地下を走っていた水道の水。 地面から溢れだす水流がうねり蛇の如くエスデスへと襲い掛かるが、エスデスはそれに氷をぶつけて防御。 角度や方向、形を変えながら攻撃するも、それらは容易く氷の壁で防がれてしまう。 「ほう、中々使いこなしているようじゃないか。それで?まさか私をこのまま倒せるとでも思っているのか?」 「さて。それはどうでしょうか、ね!」 水流をエスデスの正面から襲わせ、エスデスもまた氷の塊をぶつけてそれに対応する。 「防ぎ続けるのは私の性に合っていない。このまま攻めさせてもらうぞ」 ぶつけた氷塊は、たちまち水流を凍りつかせ、あっという間に氷塊と水流の絡み合った氷の彫像が出来上がる。 氷とはもともと水を凍てつかせて形成されるもの。 デモンズエキス、いやエスデスの常識外れな力があれば、一瞬で水を凍りつかせるなど容易いこと。 液体を操るブラックマリンと全てを凍らせるデモンズエキスはこれ以上なく相性が悪かった。 「むっ」 しかし、その事実に魏は驚かない。 エスデスが氷を操ると解った時から、魏の狙いは接近戦へと変わっている。 如何に強大な力を持っていようとも、あれほどの水流を凍らせれば次に氷を作るのには時間がかかるはず。 そう判断した魏は、水流を放つと同時にナイフで己の手首を斬りつけつつエスデスへの距離を詰めていた。 振るわれる右腕と共に飛来する血液。 それはエスデスの眼前にまで迫り 「大味な技を囮に必殺の技を隠す。中々面白いが、相手が悪かったな」 身体に付着することなく、突如現れた氷の膜に防がれた。 魏の考えは決して間違ってはいない。 能力を派手に使えば、休む間もなしに能力を発動することは困難。それは、エスデスにも当てはまることだ。 だが、彼女のそのインターバルは極端に短い。ほんのわずかにタイムラグがあるだけで、僅かな力なら発動することが出来る。 魏は舌打ちをしながら指を弾き、氷の膜を破壊する。 「血が付着した部分を消し飛ばすことができる...なるほど、聞いた通りの力だ」 エスデスは氷で作った急繕いの剣を振るい、魏はそれを左手に持つアーミーナイフで迎え撃つ。 しかし、いつまでも密着して凍らされては敵わないので、すぐに距離をとると共に腕を振るい血を放つ。 「確かに強力だが、弱点が多すぎる。ひとつ」 飛ばされる血を氷の剣を振るい付着させる。魏は指を鳴らすが、破壊されるのは氷の剣だけ。 「こうやって人体以外のものを割り込ませてしまえば、それだけでほぼ無力化されてしまう。ふたつ」 エスデスは巨大な氷柱を魏に放ち、魏はそれに血を飛ばし、指を鳴らして破壊する。 その隙をつき、エスデスは魏への距離を一気に詰める。 先程魏がやったのと同じく、大味な技を囮に接近戦へと持ち込む腹積もりだ。 魏は再び腕を振るおうとするが―――間に合わない。 氷のグローブを纏ったエスデスの拳のラッシュがそれを許さない。 ラッシュの速さでは会場の中でもトップと言えるDIOの『世界』と曲がりなりにも殴りあえたのだ。 その威力と速さを捌きつつ反撃するのは至難の業だろう。 「血を飛ばそうというのなら、どうしても大ぶりな動きになってしまう...そのため、動きを制限されては反撃が難しい。私は流れる血にさえ気をつけていればいいのだからな。そして三つ目」 ついには反応しきれなくなったエスデスの拳が、魏の胸板を捉える。 以前受けたスタープラチナ、程とはいえないが、その重い拳を受けて魏は後方へと吹き飛ばされる。 「斬撃ならいざ知らず、打撃では血をばら撒けないためこうして遠慮なく攻撃ができる。どうだ、私の拳も中々のものだろう」 胸部に受けた痛みにより、魏は一瞬だが息を詰まらせる。 そんなことをお構いなしにエスデスは再び魏へと肉迫するが 「!」 エスデスの足元の地面が盛り上がったかと思えば、水流が踊り狂い、そのままエスデスをのみこみ、姿さえ見えなくなってしまう。 やったか、などとは思えない。 これはあくまでも牽制程度にしか考えておらず、少しだけ時間を稼ぐための苦肉の策だ。 いつ全てが凍りつき再び相対してもいいように、目は離さない。 「なにっ!?」 が、しかし、確かに時間は稼げたが、彼女の行動は予想を超えていた。 水流の全てを凍らせるのではなく、一部だけを凍りつかせ小さなトンネルを形成。 これでは、僅かな時間しか持ちこたえられないが、彼女の身体能力ならそれだけでも充分。 一直線に駆けだした彼女は、あっという間に魏との距離を詰め、その手に持つ巨大な氷のハンマーで魏を殴りつける。 魏は咄嗟に防御の耐性をとるものの、耐え切ることはできずに吹き飛ばされ、囮に使った水流の成れの果てにぶつけられた。 そして、間髪をいれずに投擲される氷の槍は、魏の左肩を貫きその場に固定させる。 「ぐあああっ!」 「悪くない悲鳴だ。...よし」 エスデスは、魏から一定の距離をとり氷の弾丸を宙に浮かせる。 「戦いもいいが、そろそろ単純に苦痛の悲鳴も聞きたかったところだ...さあ、愉しませてもらおうぞ」 エスデスは戦闘狂であるのと同時に拷問マニアである。 人体のどこをつけば苦痛を最大限に与えられるか、ぎりぎり死なないラインはどこなのか。 拷問による悲鳴を聞き愉悦を抱くためだけに、彼女は拷問について熱心に勉強している。 この会場に来てからは戦闘は存分に楽しんだが、拷問はほとんど手を付けていない。 そろそろ拷問欲求を満たしたいところだ。 できれば足立あたりがよかったが、まあ仕方ない。 それでは拷問を開始しよう。 「...さきほどあなたに指摘された弱点ですがね。私もここに連れてこられてから痛感していたのですよ」 ぼそぼそと、氷塊に縫い付けられた魏は語る。 「恥ずかしながらその弱点を突かれて逃走を喫したことすらある。とはいえ、これもまた対価であるためおいそれと変わることはできない」 よく聞き取れないが、諦めたのかと思い、氷の散弾の第一投を放つため、右手を挙げる。 そして、気が付く。 魏の目はまだ死んでいない。 「けれど、そんな能力でも工夫はできる―――例えばこんなふうに」 パチン、と音が鳴り響き。 「ッ!?」 同時に、エスデスの爪先に痛みが走る。 エスデスは視線を逸らし、確認する。 削られていた。 エスデスの爪先が、消え去っていたのだ。 エスデスが僅かに怯んだ隙を見逃さず、魏は懐から球状のものを取り出し投げつける。 (なんだこれは) 見覚えのないそれに、かつて噂で聞いたことのある帝具を思い浮かべる。 帝具『快投乱麻ダイリーガー』6つの球の帝具であり、そのひとつひとつに属性が付与されており、投げると効果が発動するというものらしい。 それでなくとも、この戦況で使うのなら有効打となるものだろう。 そう判断したエスデスは、飛来するそれを凍らせ 「ただのビリヤードの球ですよ。尤も、少々細工を施してありますが」 ようとするがしかし、球は突如軌道を変化させ、エスデスの技から逃れる。 更にその球から細い水流が飛び出し、エスデスの右肩に付着する。 そして。 ―――パチン 指が鳴ると同時に、エスデスの肩の一部が吹き飛ばされる。 その隙をつき、魏は右手首から流れる血を氷の槍に擦りつけ、指を鳴らし破壊。 拘束から逃れることに成功する。 「随分と小さいですが、まあ、一撃は一撃です」 魏が球に仕込んでいたのは、己の血液を溶かし合わせた少量の水。 カジノにて眠りにつく前、球に穴を開け、その水を入れて蓋をしておいた。 中にある水を、ブラックマリンで操作することによって、魏は変幻自在の魔球を投げることが出来たのだ。 そして、エスデスの爪先を吹き飛ばしたタネは至って簡単だ。 エスデスが水流の相手をしている際に、魏は右手首の血を地面に流していた。その地面を消し飛ばす際に、エスデスの爪先も巻き込まれただけのこと。 派手に水流を操っていたのも、全てはこの設置型の罠の目くらましである。 (だが、運が悪い...もう少し踏み込んでいれば片足は奪えただろうものを) 「面白い戦い方をする奴だ。そういうのも悪くない」 「あなたに褒められても嬉しくはないですね」 魏は思う。 これだけやっておいて、比較的余裕があった自分が半死人の筈のあの女に与えた傷は微々たるものだ。 相性の問題もあるが、やはりあの女の力は底知れない。 このままでは負ける。かといって、逃走手段も限られている。 さて、どうするか。そんなことを考えていた折だ。 「随分と派手にやっていると思えば、あなたでしたかエスデス」 「中々面白いことをしている。どれ、この老兵も混ぜてはくれんかね」 この逆境を覆す転機が訪れたのは。 ☆ (さて、どうしたものか) 西へ向かう道中、大規模な爆発音が響いたかと思えば、こんどは荒れ狂う水流と氷塊がぶつかり合う超常現象合戦だ。 何者かがいるに違いないと判断して脚を運んでみたが、状況は最悪といえる。 多くの参加者と敵対し、イェーガーズもまた壊滅したために孤立しつつもその圧倒的力を誇るエスデス。 自分とほとんど同じタイミングで辿りついたとみえる眼帯の男―――能力研究所で出会った喋るステッキの情報が正しければ、殺し合いに乗っているキング・ブラッドレイで間違いないだろう。 もう一人ゲームに乗っている参加者もいる。 更にいえば、その内二人はまず間違いなく話が通じない相手。 家庭用RPGでいえば、必須レベルアップの最中に、その地域に見合わない強さを持つ野良モンスター三体と同時に遭遇してしまう。 そんな在りえるレベルでの最悪な状況だ。運に任せて逃げるを選択するのが最善の策だろう。 (だが、やりようはいくらでもある―――それに、これくらいの困難は無いと面白くはないだろう?) 簡単すぎるRPGなど退屈以外のなにものでもない。多少の刺激があってこそ、楽しみは生まれるものだ。 例え、現状が考えられる中で不幸な部類に含まれていようとも。 例え、UB001なる者から依頼を託されていようとも。 そんなことで、研究者であり開発者でありプレイヤーでもある茅場晶彦の好奇心は揺るがない。 ただ、己の欲求を満たすことだけが彼の行動原理である。 かつて幾千ものプレイヤーを巻き込んでまで、かつて夢見たあの城を追い求めたのも。 こうして、ただの一プレイヤーとしてゲームに臨んでいるのも。 全ては己の飽いてやまない欲求に従っているだけのことだ。 そして、それを達成するためならば―――茅場晶彦は手段を択ばない。 「久しぶりだな、ヒースクリフ」 歩みよってくるヒースクリフに、エスデスは敵対の意を見せずに再会の言葉を交わす。 「時間にして思えばそうでもありませんが、たしかにあなたとは随分長い間会っていないような気もする」 「首輪の方はどうだ。なにか成果はあったのか?」 「残念ながら。そもそも首輪自体が中々手に入らないものでね」 それより、と言葉を切り、ヒースクリフはしゃがみ込み足元に転がるモノの顔を覗きこむ。 「彼女たちの骸...私がいただいてもよろしいですか」 「なんだ、死体愛好者だったのか?それとも人肉主義者か?」 「違いますよ。まどかは共に脱出を志した同志です。その骸はしっかりと弔ってやりたい」 「お前がそんなに義理堅い奴とは思えんがな」 「これでも人並みの情はあると自負しているつもりですけどね。それと、ついでですが」 エスデスに背を向け、ヒースクリフは魏志軍を鋭い目つきで睨みつける。 「彼の相手は私がしても?」 「どうした、やけにやる気があるじゃないか」 「彼は以前、まどかを襲撃している。同志を襲われた借りは必ず返す主義ですので」 「どの口がいうのやら。...コレももう少し使いたかったのだがな。まあいい。死体もあの男も好きにしろ」 「ありがとうございます」 思ったよりも話が通じるんだな、と意外に思うヒースクリフだが、それだけで彼女に抱く印象が全て覆るわけではない。 エスデスはこの殺し合いにおいて厄介な女だという認識は。 だが、とりあえずいまやるべきことはこれだ。 「魏志軍...まどかや承太郎たちからきみの話は聞いている」 「あなたもコンサートホールにいたというのですか...それで、あなたは私をどうするつもりですか」 「一度襲ってきた以上、襲われる覚悟もあるだろう。つまり」 魏志軍が構えをとるのと同時にヒースクリフは駆け、魏志軍との距離をあっという間に詰める。 (速い!) 身にまとった鎧や盾からは考えられない速度で動くヒースクリフを見て、魏の心中に僅かに焦燥が生じる。 (...が、しかし。反応できない速さではない) 突き出される盾を躱し、右腕を振ろうとする。 それを認識したヒースクリフは、なんと魏の右掌に蹴撃を当てることにより魏の動きを制御。 それだけで血をばら撒かれるのを防いだ。 魏は舌打ちをしつつも、飛び退きヒースクリフから距離をとる。 (面倒な敵だ) ただでさえ高い身体能力に加え、鎧や盾に身を包まれた男だ。 血を浴びせるのは至難の業だろう。 ブラックマリンを使おうにも、エスデスがいる以上ほとんど効果はなさない。 ならば。 魏は、ヒースクリフやエスデスには目も暮れずにこの場からの逃走を試みる。 逃がしてたまるかとでもいうように、彼を追うヒースクリフ。 エスデスと新手の眼帯の男は追ってくる様子はない。 好都合だ、と魏は思う。 今まで逃走用に使用してきたスタングレネードはあとひとつしか残っておらず、タネも割れている以上、使うことは得策ではない。 それに、魏の目的はあくまでも首輪の補充。 エスデスとヒースクリフ。この二人に同時に襲い掛かられては流石に生きて帰ることはできないだろう。 だが、こうして彼一人を誘い込めば、いくらでも対処のしようはある。 思い通りにことが運んでくれたことに、魏は思わず笑みを浮かべる。 (これでいい) 逃げる魏を追いながら、茅場晶彦は思う。 いまの彼のスタンスは、『まどかの敵討ちに燃える男』となっている。 無論、彼女の死体を見てなにも思うことはなかったかといえば嘘になるが、それで敵討ちに燃えるなどという感情がある筈もない。 悪趣味なものだと内心エスデスに引いていた程度である。 エスデスにどこまで勘付かれているかはわからないが、結果として、魏とは一対一に持ち込めたし、エスデスもブラッドレイもこちらを追ってくる気配はない。 二つの不純物を取り払うことで、彼の目的の第一歩へと近づけた。 そのことを実感すると、茅場晶彦もまた思わず笑みを浮かべていた。 (意外と簡単に済んだが、さて、ここからがひとつの正念場だな) ☆ 「追わなくてよかったのかね」 去っていくヒースクリフと魏志軍を手を出さずに見届けていたエスデスに、ブラッドレイは問う。 「ああ。奴は私の知り合いだからな。その意は汲み取ってやるさ」 「知り合い、か」 「あいつは常に腹に一物を抱えているような男だからな。仮に裏切ったとしてもたいして驚かんさ」 それに、と付け加えるように氷の剣の切っ先をブラッドレイに向けて言い放つ。 「魏志軍の奴とももう少し戦いたかったが―――いまの私の興味はお前にある」 「ほう。私のことを知っているのかね?」 「卯月から聞いている。セリューやウェイブたちを圧倒した男だとな」 「卯月...島村卯月、彼女か。それで、きみはどうする?セリューくんたちの無念を晴らすために戦うかね?」 「いいや。奴は確かに貴様に敗北した。だが、殺したのは別の男だ」 もしも、セリュー達がキング・ブラッドレイに殺されたのなら、口上にもそのことを付け加えただろう。 だが、セリューを殺したのはおそらくゾルフ・J・キンブリーであり、彼もまた放送で呼ばれている。 マスタングもここで永遠の眠りにつき、ウェイブも既に離反している。 ならば、もはや口上にすら付け加える必要はない。 「私の愉しみの糧となってもらうぞ、キング・ブラッドレイ」 「取り繕いもしないか。それもまた良し」 エスデスに応じて、ブラッドレイもまた剣を抜き、構えをとる。 エスデスには先に去った二人を追わないかを尋ねたが、ブラッドレイ自身にも当てはまる。 先程、エスデスは来訪者をヒースクリフと呼んでいた。 それは即ち、当面の目的として接触しようとしていた男の名である。 棚からぼた餅とはよく言ったものだが、やはり御坂を置いて来てまで進路を変更した価値はあった。 だが、いまは彼に、戦場から去る者たちに構っている場合ではない。 眼前には、絶対なる強者がいる。 ブラッドレイの欲求を満たすに足る絶対的強者が。 ならば、力を温存する意味もないだろう。 ブラッドレイは、眼帯を外し『最強の眼』を露わにする。 二人の視野外で、水流による破壊音が響き渡るが、両者は意にも介さない。 ただ、眼前の強者と戦いたい。その想いだけが両者を占めている。 そして、幾度かの水流の音が鳴り響くのと同時。 両者は、共に駆け出した。 →